作品について
青いファーのコートをまとう、マリー-ジョセフ・サンソン。金縁の額から抜け出してこちらに歩みだしてくるかのようだ。
ファーのコート、光沢感のあるブラウス、ぴったりと脚にはりつくレギンス、輝くバックルなど、色や形だけでなく、それぞれの質感までが表現されている。
「プレタポルテ」がファッションのシーンに登場するのは1950年代末以降であり、18世紀のパリには既製品の服を売るブティックなどどこにも存在しなかった。
自分の好みの服を見つけ、買い、着るという「自由」。タイムスリップして現代の衣装を身にまとうキャラクターは、軽やかで快活に見える。
ファッション誌「SPUR」2020年11月号の特集「POWER OF MANGA/漫画がモードを描くなら」に掲載された。
同時収録されるドローイングプリントでは、この作品の描きはじめがどのようなものであったかを鑑賞できる。
*この作品は2枚セットです。
*プリントにサイン(直筆)
1990年、『キース!!』で「週刊少年ジャンプ」第70回ホップ☆ステップ賞入選。同作でデビュー。『孤高の人』『イノサン』『イノサン Rougeルージュ』の写実的な描写で知られる。『イノサン』より、フルデジタルでの作画を行う。デジタル作画に移行したことで「何度でも描きなおせる」「表現を突き詰める」ことができ、新たな世界が開けたと話す。
『孤高の人』が第14回文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞。『イノサン』が第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出、第18回手塚治虫文化賞ノミネート、マンガ大賞2015第7位。『イノサン Rougeルージュ』が第21回、第22回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。2021年現在、「グランドジャンプ」に『#DRCL』連載中。
18世紀・フランス革命期のパリを「無垢」に生き抜く、死刑執行人の兄妹を描く。国王ルイ16世の斬首刑を指揮したシャルル‐アンリ・サンソンと、妹マリー‐ジョセフ・サンソンを主人公にしている。続編として、2015年より「グランドジャンプ」で『イノサン Rougeルージュ』を連載。「すさまじい画力」「これはマンガなのか? 絵画なのか?」と多くの読者を驚嘆させる。2019年、宮本亞門脚本・演出による舞台「イノサンMusicale」が上演された。

アーカイヴァル インクジェット プリント
マンガの原画、特に染料系のマーカーで着彩されたカラーイラストレーションは、非常に褪色しやすい。マンガ雑誌の表紙や口絵、コミックスのカバーのために描かれるイラストレーションは、もともと原画そのものが展示〜鑑賞されることを前提に描かれてはいない。印刷され、雑誌やコミックスとして読者の手元で見られることを想定して制作されているのである。線画をコピーしたうえに着彩されているものも多く、キャラクターと背景で切り貼りされているものもある。変色した色の修正を含め、これらの作品化にあたってはレタッチが必要となる。

2008年からマンガのデジタルアーカイブを進めている集英社では、当初は高精度スキャナEverSmart Supreme II、2015年からは高解像度のデジタルカメラPhase One IQ180により、カラー原画をキャプチャーしている。2020年からはPhase One のCultural Heritageシリーズを使用。商業印刷では再現できない色の領域まで撮影〜保存することができ、絵が描かれた紙のテクスチャーまでも取り込むことが可能である。
このデジタルアーカイブデータと撮影機材を活用し、原画が描かれた当時の色彩を復元すべくレタッチ。原画〜データ〜プリンタをつなぐ適切なカラーマネジメントを行い、プリントを行っている。
またデジタル作画された作品においては、商業印刷で一般的なsRGB領域ではなく、より広い色域を持つAdobe RGB領域でのカラーマネジメントとプリントを行い、深く鮮やかな色を表現している。
