
今回の作品について、久保はこう話す。
「もともとは『少年ジャンプ』のために描いた絵を、和紙に刷る。この話を聞いたとき、嬉しく思うと同時に、どんな仕上がりになるんだろう? という不安もありました。実際、こうして出来上がったものをみると、マンガ独特の細かな線や鮮やかな色が非常に美しく再現され、でも、水墨画などの伝統的な表現とも全然違う。これまで見たことがないものになっていると思います。
コロタイプ印刷では“最初に黒を刷って、その後に調子を見ながら色を刷り重ね、最後に黒をまた刷る”という工程がとられたとのこと。この順番って、僕がこの絵を描いたときの順番といっしょなんです。最初にスミで絵を描き、ベタを塗って、それをいったんプリントする。その後に着彩して、最後にベタを塗り重ねています。白い部分にホワイトは使わず、紙の白を生かして目や歯、服などの白さを表現するところも同じですね。
和紙は時間とともに色がゆっくりと変わっていく、とのことですが、子供たちの世代か、孫の世代かに、この絵がどう見えているのか、も楽しみです」