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グムンドコットン×活版平台印刷

「The Press」のシリーズに使用している、コットン100%用紙「グムンドコットン マックスホワイト」について

マンガの起源に立ち返る。活版印刷のための表現として進化してきたモノクロームのマンガ本文の絵を、大型活版平台印刷機で等倍プリントする「The Press」のシリーズに、我々はコットン100%の紙「グムンドコットン」を使用している。

「週刊少年ジャンプ」の活版輪転印刷も行う共同印刷グループの協力により、長野の蔦友印刷株式会社に、現役稼働する大型の活版平台印刷機が見つかった。ドイツ、ハイデルベルグ社の1960年代製活版平台印刷機。この機械に、通常の商業出版では使用することがない様々な紙をセットし、プリントテストを行った。

色、質感、保存性や、印刷機との相性。熟練の技術者によるプリント検証をへて、我々が採用したのが「グムンドコットン マックスホワイト」である。

Movie copyright by Gmund Paper

長期にわたる保存や鑑賞の要求にこたえるため、写真〜版画作品にも使用される「コットン100%」の紙を選択。多くの一般的な紙はパルプから作られるが、製紙の際に使われる化学薬品の作用で、経年劣化や変色が起こるものも多い。コットンの紙は、こうした経年変化が少ないだけでなく、自然環境への影響も少ないことで注目されている。

「グムンドコットン マックスホワイト」は、GMUND(グムンド)社によるコットン100%のファインペーパー。

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photograph copyright by Gmund Paper

GMUNDは、ドイツ・バイエルン地方のテーゲルン湖畔に1829年に創業された製紙会社。現在も稼働しているものとしてはヨーロッパ最古の、約200年前のペーパーマシンを使用している。伝統を大切にしながら、自家発電率を高め、使用する水を削減し、環境負荷を下げる努力を継続。作られる紙の品質はもちろん、そうした企業としての姿勢が高く評価され、数多くのハイブランドがパッケージやコミュニケーションツールに同社の紙を採用している。

「グムンドコットン マックスホワイト」は、バイエルン王・マクシミリアン一世(1756-1825)へのオマージュとして命名された。コットン100%の「グムンドコットン」の中でも、もっとも白色度の高い紙である。その表面はスムーズで柔らかであり、高い圧力でプレスされる活版平台印刷により、印刷面が沈む独特の表情が美しく現れる。

原料にコットン=綿花を用い、環境負荷の高い塩素漂白などを行わないため、黒い種子の成分が完全に除去されていないが、そうした点もまた紙の「個性」として我々は受け止めている。

2021年4月。GMUNDの日本の代理店である竹尾の方々に紹介いただき、同社のシニア・マーケティング&ディベロップメント・マネージャー、マクシミリアン・フーバー氏とオンラインでの会談を行った。日本から送付した「The Press」の見本を見ながら、次のようなコメントを寄せていただいている。

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photograph copyright by Gmund Paper

「マンガは本来、毎週のように消費されていく性質のものであると理解している。
しかしマンガの粋を集めて作られたこのマンガアートは、より長期的で本質的な要素を備えている。さらにはマンガとの新たな関係性をも示唆している。

例えばマンガアートが壁に飾られたとしよう。 それはアートとして認識され、もはや消費という次元を超えた存在となる。マンガが持つストーリーや本質がより強く伝達され、鑑賞者と結びつくようになる。

当社のペーパーをパッケージではなくマテリアルとして使用するというアイデアも素晴らしい。

他に類を見ないユニークな存在だと思う。敬意を表したい。」

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